深夜の東京湾洋上。

一隻の古い貨物船が浮かんでいる。

数多くのコンテナを積んだ、台湾国籍の船。

その甲板に、男はいた。

香港を拠点とする犯罪組織三合会の一つ、『14K』の首領、葛 龍煌 (コ ロンウォン)。

14Kは、90年代には世界最大規模の犯罪組織であったとも伝えられる。

三合会の流派の一つであり、一時は数十万の成員を持つともいわれた最大流派であったが、度重なる組織の分裂、また香港返還などを遠因として、その規模は次第に縮小したと見られる。

だがこれらについては推定の部分が大きく、秘密結社的な性格を帯びた組織としての特色もあって、その実態は断片的に知られるのみである。

それでも現在の規模でも数万人。

間違いなく世界規模の犯罪組織だ。