あたかも大名行列の如く走行する、数十台のベンツ。

その中央で守られるように、一台のベンツがいた。

後部座席に乗っているのは、着物姿の高齢の男。

仁道會組長、古賀 磯継。

彼は都内でのバスソルト流通を視察し、その帰りであった。

結果として流通したバスソルトは数百人という中毒者を発生させ、大パニックを引き起こしているが、本人は意に介していない。

こちらは需要があるから供給しているのだ。

買う者がいなければ、こちらとて危険ドラッグなど売りはしない。

買い手が求めるから、こちらも売るのだ。

ドラッグはいけない、法に触れるものを買ってはいけないというのならば、強い意志でドラッグを断ち切ればいいではないか。

己の意志の弱さを棚に上げて、売り手のみ罰するのは如何なものか。

それが古賀の認識。

今回の件にしても、全く悪びれてはいなかった。