「驚いたわ…あの男の正体が、今回のこの事件の黒幕だったなんて」

「ああ…まさか仁道會の組長自らが、混乱の最中に現場にいたとはな」

美奈の言葉に、倉本が頷く。

美奈が古賀と遭遇したのが、数時間前の事。

もう夜明けが来る。

既に都内からは離れ、恐らくは仁道會の本拠地である九州へと向かっている筈だ。

「野郎…逃がすか」

巽が部屋を出ていこうとするが。

「待て巽」

クリスが巽を止める。

「何度も言わせるな。お前は今は環さんのそばにいてやれ」

「……っ」

やり切れない様子で、巽は再び座った。