額縁の中の写真の男。

美奈は確かに覚えていた。

歌舞伎町にバスソルト中毒者が蔓延し、たった一人で逃避行を続けている最中に見た。

マンションのベランダを伝って逃げている際に、美奈を嘲笑うだけ嘲笑って、見捨てていったあの男だ。

白髪混じりの短髪、唇の右側の縦に走る古傷。

かなりの高齢だったが、あの凄味のある顔立ちは忘れる事はない。

中毒者に追い込まれていた美奈を容易く見捨てていった、恐らくはサイコパスと思われるあの男…。