そうこうしているうちに、木々の間から出てきた女が、手にした大きなスコップを振り上げて軽装甲機動車の車体を殴る!

何度も、何度も、狂ったように。

旧道の犬吠トンネルには柵があり、乗り越えた所に紐と缶の仕掛けが施されていて、引っ掛かると大きな音が鳴り、斧を持った村人が駆けつける…確か都市伝説は、そういったものだった。

正気を失った形相で車を殴り続ける女の姿は、まさにその都市伝説を彷彿とさせた。

「…行こう、進藤」

クリスが促す。

こちらは車やバイクに乗っている。

走り去ってしまえば、中毒者とて追いつけるものではない。

彼らは女を置き去りにして、そのままその場を後にした。