「只の女性ならな」

クリスは冷静に受け答えた。

「バスソルトは極度に依存性が高い…薬物の効果がある間は、他者に食らいつくような異常行動をとり、使っている本人にもその不快感は残るくせに、薬が切れると、その禁断症状たるや半端なものじゃない…クスリが欲しくて欲しくてたまらなくなる…俺達にそれを抑えてやる術はない。彼女をここで保護した所で、逆に危険の種を抱え込むだけだ」

「……っ」

クリスの言葉は正論だった。

頭では分かっている。

が、見捨てていく事は感情が納得しない。

歯噛みする進藤。

「…お前はまともだ、進藤。だが今は割り切れ。今は平時じゃない。東京近郊に化け物じみた中毒者が蔓延っている…『緊急事態』なんだ」