だが、そんな話をしていた時だった。

「倉本さん、巽さん!」

最後尾で軽機動装甲車を運転していた自衛隊員の進藤が、運転席から身を乗り出して叫ぶ。

「あそこ、誰かいます。要救助者でしょうか?」

「何?」

振り返る倉本と巽。

こんな山深い山林の中、しかもこんな夜中に、女が立っていた。

その風体が見るからに異様だ。

長い黒髪を振り乱し、身に付けているのは下着だけ。

手には工事現場で使うようなスコップを握り締めている。

この場で、レイプでもされたのかと思わせるような出で立ち。

誰が見ても異常さを感じる。