動く度に筋肉が、関節が痛みを走らせて訴えかける。

もう肉体が限界だと、美奈に伝えてくる。

彼女とて医者だ。

そんな事は言われずとも分かっていた。

しかし止まっていられないのだ。

「っ!」

物陰から、目を充血させた中毒者が、両手を伸ばして飛び出してくる。

真っ直ぐ進まない両足で、それを回避するのが精一杯。

捕まらないように逃げるのがやっとだった。

走って距離を引き離すなどという余裕はない。

これ以上、走る速度を上げられない。

美奈は必死に走っているつもりなのだが、体がもう言う事を聞かない。