それでも無理をおして、逃避行をするしかない。

…暗闇の中、あちらこちらから息遣いが聞こえた。

ハァハァと、獣のような荒い呼吸。

汗臭い、獣臭にも似た臭いが漂ってくる。

殺気じみた気配。

そんな気配が幾つもついて来ているのが分かった。

あからさまな殺意を持って、追いかけてきている。

その殺意は、明らかに美奈を『標的』として定めていた。

『獲物』として追跡していた。