しばし愕然とする美奈だったが。

(駄目よ、しっかりしないと)

彼女は己の頬を両手でパンパン!と叩く。

絶望しても泣き崩れても、ここには自分しかいない。

他にいるのは、人間を食い散らかしたい狂った中毒者だけだ。

死にたくないのなら、身を守りたいのなら、自分がしっかりするしかないのだ。

美奈は屋上に座り込む。

冷静になって、持ち物から確認してみよう。

まず持っているのはスマホ。

先程警察に通報しようとして、結局できなかったのだが。

「…やっぱり」

通話しようとして溜息をつく。

この混乱の最中だ。

電話はまともに通じない。

回線がパンクしているのだろう。

メールにしても同じ事。

電波が上手く届かなかった。

とはいえ、災害時の掲示板などがサイトに設けられている場合もある。

一応捨てずに持っておく事にする。