エレベーターホールから、階段で屋上に向かって歩きながら美奈は考える。

危険ドラッグの中毒者が出没しているというのは、倉本から聞いた。

だが、中毒、依存症といっても、大抵の薬物の場合は運動失調、認識障害、記憶障害、不安、落ち着きのなさ、幻覚、妄想、吐き気、嘔吐といったものだ。

人間に襲い掛かり、ましてや咬みついて人肉を咬みちぎるほどの凶暴化を引き起こすドラッグなど、今まで聞いた事がない。

いや…。

立ち止まり、思い出す美奈。

それが倉本の言っていた、バスソルトというドラッグなのではないか。