偶然にもあさみと重なった休日に、ショッピングの約束をした。
待ち合わせようと言うと、迎えにいく、と頑なに譲らなかったあさみに私が折れた。
カーテンを全開にして、春の暖かさが感じられる朝日を浴びながらあさみを待っていた。
「おはよう。久しぶり!」
ドアを開けた瞬間に抱きついてきた力の強さに思わずよろける。
新年度が始まって忙しいせいか、あさみの細い腕が更に細くなった気がした。
「これ誕生日プレゼント」
私に渡してきた紙袋には、私たちがいつもよく行く服のブランドのロゴが入っていた。
開けて。とニコニコして言ってくる辺り、私が喜ぶ自信があるんだろう。
袋の中のものを取り出してみる。
袖がシースルーのオフホワイトのカットソー。
所々色褪せたヴィンテージ感のあるデニム。
パールやビジューで施された、ネイビーがベースのチェックシャツ。
普段なら自分で選ばないカジュアルで凝った洋服に心が踊る。
着替えるようにと脱衣所へ背中を押される。
鏡に映ったあさみをよく見ると、私にプレゼントした一式の服の色違いのものを着ていた。
あさみが来たらそのまま出るつもりで着ていたワンピースを脱ぐ。
ハサミでタグを切って、貰ったばかりの服を着る。あさみほどは似合っていないけれど、不自然ではない…と思いたい。
「うん、よく似合ってる。アクセはこれね」
ネックレスとピアスを掌に置かれる。
長年の付き合いのせいか、クローゼットの中にあるアクセサリーボックスを勝手に開けられることにも何も感じなくなった。
まるであさみとは家族みたい。
本当の家族があさみだったらよかったのに、と何度思ったことか。
ネックレスとピアスをつけたら、ハーフアップにアレンジした髪に絋がくれたヘアコロンをつける。
最近、仕事の時もどこかへ出掛けるときにも必ずつけるようになっている。
リビングに行くと、あさみはソファーに座ってスマホをいじっていた。
「朋香、今日お昼パンケーキでいい?」
「パンケーキ?」
「そ。私たちもたまには女の子っぽいもの食べようよ。ほら、こっちきて」
手招きをされて、ソファーの空いた場所に腰を下ろす。
見せられたスマホを画面を二人して覗き込む。
この間読んだファッション誌のパンケーキ特集に載っていた店がそこにはあった。
「いい匂いする。香水?」
絋からもらったヘアコロンのことだと思い、答えると、
「へぇー…、和泉がね」
ニヤニヤしながら私を見てくるあさみが、何を考えているのかよく分からなかった。

