「あさみちゃんは?何の仕事?」
「私はプレスしてる」

またまた絋の目が見開く。

「すげぇな…どこのブランド?」

あさみの勤めているファッションブランドは、社会人にも学生にも人気のフェミニンな雰囲気。雑誌にもよく出ていて、私もそこで服を買ってたり。


絋も雑誌とかは読んだりしているのか、すぐにブランドのことを理解してた。

「あ、そういえばさ。私んところのブランドがお世話になってる雑誌でさ、今度美容室特集やるらしいの。絋のところ、紹介していい?」

「え、本気?」

「本気本気。また後日お店に電話するから」

サラッと言ってしまうあさみに、急なことに驚く絋。

「イケメン店員、和泉絋も紹介するから、よろしく」
ニヤッと笑うあさみに、絋はついていけてなかった。



「絋って、昔から美容師になりたかったの?」
なんとなく会話が途切れ、気になっていたことを聞いてみた。

「いやぁ…そういうわけじゃないんだ」

「大学進んでたよね?」

「そう。進んだのは進んだけど、イマイチピンと来なくてさ。

俺、大学ですっかり埋もれて。なんかつまんなくなって。何か自慢できることがしたいって思ったの」

「サッカーは?」

「サッカーは、続けた先が見えないじゃん?
まさかプロになんてなれるわけないしさ」

「それで、なんで美容師?」

「勉強すれば、成果が出ることがよかったんだよね。
それで、俺高校のとき、よく編み込みとかしてたの覚えてる?」

そういえば…
一際目立つ明るい茶髪を、編み込んだりしてたなあ。
誰にやってもらったの?って聞いたら、自分って言ってた。

「結構、髪いじるの好きかもって。前髪も自分で切ってたしさ。

それで、大学は中退して専門入った」

「中退か…親御さん何か言ったでしょ?」

「釘刺されたよ。

成功しなかったら、もう知らないってな」


今笑えて語れているってことは、成功したってことだよね。