美容室を出て18時まで少し時間があったから、あさみの買い物に付き合った。
あさみと出かけるときは、大体服を買ってる。
服はいくつあっても足りないんだって。
だからあさみの誕生日にはいつも、服をプレゼントしてる。
「和泉がどこかに連れていってくれるの?」
「さぁ。ご飯いこう、だけだった」
「私今日イタリアン行きたいと思ってたのに」
プクッと頬を膨らませるあさみ。
あさみとのご飯は、それなりに値段のするところでいつも食べる。
私たちはどっちもハードな仕事。
つまり、その分お金が増えていく。
週1で休みが取れればいい方な私たちは、その辺のOLよりはだいぶ稼いでるってわけです。
だから、ご飯ぐらい贅沢したってバチは当たらない。それが私とあさみのモットー。
もし絋が連れていってくれるんだとしたら…その辺の居酒屋、とか?
ダメだ、また昔の印象に囚われてる。
「イタリアンは、期待しないでおこ」
「だね」
その分、今度もっといい所行くってことで。
「お待たせ!」
指定してきた待ち合わせ場所に表れた絋。
駆け寄ってくるスピードは、サッカー部の頃の速さが全然衰えてなかった。
「スペイン料理でいい?俺一回食べてみたかったんだよね」
スペイン料理か…大学時代にサークルの打ち上げて一回行ったことあったな。
有無を言わさずこっちな、と歩き出す絋の姿をみて、あさみが肩を落とした。
ね、イタリアンはないって言ったでしょ。
歩いて15分くらいでついたスペイン料理屋は、結構お洒落だった。
あさみはもっと汚いのかと思っていたのか、良いね、を連発して中に入っていった。
「二人、何飲む?」
「生ビール大で」
あさみとぴったりハモった声に、絋が笑う。
可愛くカシスオレンジとか、無理です。
私たち歴とした飲んべえだよ。
どんなお洒落なお店でご飯しても、最後はいつだってビールなの。

