ロールキャベツ


カットを終えて、また椅子に座ってあさみを待っていた。

カラーをした上にちょこっと切ったらしいあさみは、今からやっと髪を乾かすところ。


まだまだ時間かかるかな…

まぁ、いいか。
ネイルもして、髪も切って、いい気分だからね。

髪を切ってくれたのは綺麗な女性。

微妙に伸びていた前髪は少し流す程度に切ってもらえたし、痛んでいた毛先も揃えてもらえた。

その上、おしゃれなヘアアレンジも教えてもらえて、もう大満足。

働くときは兵隊もどきの制服があるから、お洒落を楽しめるのは髪型くらいなんだよね。


カット中、鏡越しにみた絋は慣れた手つきでお客さんの髪を切っていた。

昔の絋の印象が強いから、切りすぎたり、自分の指まで切っちゃいそうでソワソワしちゃった。

ていうか絋って、昔から美容師になりたかったのかな?

高校の時は、勉強そっちのけでサッカーに夢中だったから、全然そんなこと知らなかった。

高校を卒業して、色々と気持ちが変わったのかもね。



私も、沢山悩んでホテルに就職した。

大学でずっと語学を勉強していたから、それを生かせる仕事がしたい、とそんなことをぼんやりと思っていただけなんだけど。

ただの語学講師って、つまらない気がして。


何かないかな、と思っていたときに見つけたのが、ホテルマンだった。

その系統の専門学校に行っている人がやっぱり有利だとは思ったけれど、別にこれから勉強することだって出来る。

やりがいのある仕事が昔からしたかった。
ホテルマンは、それにぴったりハマったの。

一応、英語、韓国語、中国語は話せるから、観光客のお客様の相手をするときには役に立ってる。
そういうとき、ちゃんと大学に行っていたことが証明された気がして嬉しくなる。

私は、ホテルマンの仕事が大好き。
休みなんてたまにだし、泊まり勤務も多いけど、それでもこの仕事を誇れる。


だから同じように、仕事を一生懸命頑張っている人を見ると、なんだか胸が熱くなるんだ。

絋の接客をする後ろ姿が、とても逞しく見えた。