「なんで、本人だけじゃ結婚できないんだろう。親の許可がいるなんて、誰がそんな風潮決めたのかな。法律ではないのにさ」
「あんたね~、そこまで言っちゃいます?」
「言っちゃいますー」
「それは…私にもわからないけどさ!」
舌をペロッと出したあさみ。
何か名言でも言ってくれるのかと期待したのに。
馬鹿みたいに笑いあえるのが、やっぱり楽しい。
「まぁ、確かにそうだよねー。
結婚生活に、親は関係ないんだしさ。
でもそれが、ルールになってきてる。
正直、朋香みたいな人は居ないよね」
「まぁね…でも法律ではない」
「そこ譲らないね~」
酔っているせいか、どんなオチでも面白い。
こんな風に、ずっと笑っていられる場所が欲しかった。昔からずっと。
それを作ってくれたのは、あさみ。
これからはもうひとつそれが、増える。
「もう勝手に籍入れちゃうか~」
「ハンコ買って、字男っぽくしてみたりして~」
笑うタイミングも、同じ。
社会人3年目、25歳になった今でも、中学生みたいにしょうもないことで笑えたりするんだよね。
「あ、ねぇねぇ。和泉って覚えてる?」
「和泉?」
「あ。朋香には、絋って言った方がわかるかな?」
絋…ひろ…
あ!
「絋、覚えてるよ。高校の時の」
「そうそう!異様にうるさくって」
懐かしいな。
絋はクラスのムードメーカーだった。
本当、無駄に明るくてうるさくて。
ていうか、名字和泉だったんだ。
今始めて知ったかも、なんて思う私って結構残酷かな。
いや、仕方ない仕方ない。
皆が面白がって下の名前で呼んであげない中で、私だけ絋って呼んであげてたんだもん。
「でね?この間、駅前の新しく出来た美容室行ってみたら、働いてたの!」
「へー、絋が?」
「これがあのうるさいのじゃなくて、まあまあ良い男になってるんだわ」
絋が、ねぇ…
当時は…格好悪かったわけじゃないけど、良いとも言えなかった、かな。
「今度一緒に行かない?いいでしょ?
朋香と絋仲良かったんだしさ」
「うん、いいよ」
絋に久しぶりに会ってみたい。絋なら、今からでもまたいい友達になれる気がするしな…
でも、髪を切らせるのはちょっと怖いかも?
やんちゃな高校時代の絋を思い出して、そう思った。

