そんな初めての仕事を命じられてはや三十分。僕は何もすることがなくて手持ち無沙汰になっていた。
情輝様はまた煙管を吸い始め、分厚い赤色の本を読み始めた。
この三十分間で命じられた事と言えば、
「そこにある本をとれ。上から4段目、左から16番目のやつだ。」
と、いうものだけ。
…する事が無い。しかも座らずに情輝様の後ろに控えるだけ…という、まるで忍耐力を鍛えるかのような仕事。
…なんか、もっとこう、「紅茶をお持ちしました。」みたいな?そんなことをすると思ったのに。
「そんなこと君にはまだ務まらないだろう?紅茶の作り方も知らないだろうし。あと、転びそうだ。」
いきなり声がした。情輝様が本をパタン、と閉じてこちらを向く。あれ、なんかさり気なくバカにされた気が…
「上から4段目、左から17番目のやつをとれ。これも戻しといてくれ。」
「は、はい!…あの、なんで僕の考えてることが分かったんですか?」
僕は情輝様から本を受け取って本棚に戻しながらそう言った。声に出して言ってないと思うんだけど…