「そこで…何をしている…」
情輝様の声がやけに大きく響いた。月夜に舞い降りる女神の予言のようだった。
「あ、あの…。ね、眠れなくて…」
僕はしどろもどろに言った。な、なにを焦っているんだ、僕は。
「……そうか…私もだ。」
情輝様は月のほうに向き直った。
「今宵は満月、綺麗だな。その満月に魅入られる人は沢山いる…。魅入られて狂気とかすひとも多からずいる…」
情輝様はそこで一回話をきった。
何となく情輝様が居なくなってしまいそうで、この月の光のように淡く消えてしまいそうで…
「情輝様!」
「っ!」
パシッ、と腕を掴んだ。情輝様のからだがビクンッと跳ね、こちらを振り向く。僕も同時に驚きと申し訳なさで手を慌てて離してうつむいた。
情輝様の腕は骨しかないんじゃないかと思うほど細くて小さくて儚げで、少し力を入れるだけで折れてしまいそうで…そして泣いていたから驚いた。


