「どうする?今からでも直せるが?」
情輝様が言う。そんなことをして欲しくない、行かないで。僕にはそんな声が聞こえるようだった。まあ、そんな事では辞めるつもりはない。何故なら誓ったのだ。"信じさせる”…と。
「辞めません。これからよろしくお願いします。」
僕は自分の敬意を感じてもらうため、頭をきんと90度に下げ、キッパリと言ってのける。
情輝様は安心したのかふんわりと泣きそうな笑みを浮かべて、ニッコリ笑った。
今にも壊れそうな、儚く脆い笑顔。それでも、情輝様は強がって笑顔になる。
僕がニコニコしているのを不機嫌そうにまた顔を変える。僕はそのコロコロ変わる顔を楽しく見つめる。情輝様はムッーと不機嫌極まりないこえで
「では、あらためてよろしく。」
「はい!!」
既に雨は上がり、空の向こうには虹がかかっていた。まるで僕らを祝福するかのように…。
こうして僕の執事生活が始まったのだ。