さっ、と緊張した面持ちでペンを走らせる。あー、きっと文字が震えている。
生涯、もしかしたら懐かしんで見直すかもしれない、そんな契約書を震えている文字でしかもこんな汚く…。凄く後悔しながらも書き進めていく。羽ペンで、しかも瑠璃色のインクで書くのは日本の漢字。
【立向居 優輝】…。その時初めて習字を習っていて良かった、と思った。
「か、書き終わりました。」
すっ、と書類を渡すとニヤリと情輝様が笑った。子どもがイタズラをするときにする笑み。虹色の綺麗な瞳が悪戯っぽく光る。
ぱしっと情輝様は受け取ると、しげしげと見て、「綺麗だな……。」と、ポツリと呟いた。かぁっ!と顔が熱くなる。嬉しいような、恥ずかしいような、甘酸っぱい気持ち…。でも、嫌な気持ちではないことは確かだ。
そんな僕の気持ちも知らず、羽ペンを僕から受け取り、サラサラーと書き込んだ。


