一週間後。

あれからあのご新規様は毎日来店している。
まだ誰も声を聞いた事がないという状態にも関わらず毎日来るって何しに来てるんだろ?
毎日違う女の子が座っている。
しかしこれ以上女の子がいない。
今日来たら春奈が座るしかないのだ。

嫌だなぁ〜

鏡の中の自分を見ながら溜息をつく。


遠くから「いらっしゃいませ」と言う声が聞こえてきた。
もしかして?
と思っていると

「春さん。例の方です。もう春さんしかいません。お願いします」

はぁ〜
溜息ひ吐きながら控え室を出る。
会話のない席は苦手。
息が詰まりそうになる。
そう思いながら席へと足を進める。


「し、失礼します。春です」

噛んじゃった....
こんな変な緊張久しぶりだよ〜と思いながら男性へ目を向けると
バチッ!
目が合った。
女の子達が噂してたイケメンはこの人だったんだ。
ストレートの髪はワックスで綺麗に後ろに流され、二重の綺麗な目は透きとおったブラウン。
鼻はスラッと高く、薄い唇。
たぶん身長も高いんだろうと思わせる長い足。

たしかにイケメン。
見惚れていると

「春.....ふ〜ん」


.......えっ?

「しゃ、しゃべったぁぁぁ!?」

思わず大声で叫んでしまった。
店内はシーンと静まり返った。

は、恥ずかしい.....


「声、大き過ぎ」

.....無表情。
怒ってないよね?
テノールボイス。
私の好きな声色。

そう思いながら

「ごめんなさい。一言も話してもらえないと聞いていたのでビックリして....」

怒らせちゃったかな?と思いながら俯いていると

「話したくない奴と話さなかっただけ」


.....えっ?
私とは今話してるけど?
どういうこと?

「えっ?でも今は.....「話したい奴とは話すの。さっきの言葉でわかんなかったの?」

.....また無表情。
しかもバカにされた?
ムー!!
初対面なのに冷たい人!
と、思っていると

「別にバカにはしてないよ。バカにも話しかけない」

えっ?
声に出てなかったよね?