ふと、他の席へ目を向ける。
楽しそうな笑い声が飛び交う店内。

今の所問題はなさそうかな?
春奈は性格上困っている女の子がいないか、つまらなさそうにしているお客様はいないかなどいつも店内を気に掛けている。
そぉ思っている時にふと黒服と目があった。

困ったような顔をしながら頷く。
これは黒服が話しを聞いてもらいたい時の合図だ。

「少し席を離れますね」

とお客様へ伝え奥へと下がる。


「どうしたの?何かあった?」

黒服へ尋ねると

「本日のご新規様なんですが.....
女の子いろいろ変えてみたのですが誰とも一言も話されないみたいで....」

そういえばさっき見た事ない人が来店されてたな。
どの席にいるんだろ?

店内を見渡してみると、端のテーブルに無言の男性と、どうしていいかわからないというような様子の店の女の子が座っていた。

「ずっとあんな感じなの?」

「はい。楽しまれているようには見えなくて....」

来店頂いたからには楽しんで帰って頂く。
これは最低限しなくてはいけない事だ。


「夏実は今ヘルプよね?夏実に変えてみてくれる?」

夏実なら人懐っこいし、幅広い年齢層の方達にも受けがいい。

「はい」

そういうと、黒服は夏実をそのご新規様の席へと案内した。


とりあえず大丈夫でしょ。

春奈にも指名が入り席へと移動する。
春奈が座った席からは先程のご新規様の席は見えない。
様子は伺えないため夏実を信じる他になかった。