【短編】初恋は、ほろ苦く




いつもは俺の方が先にこの道を通るから、千花が今目の前にいることに驚いた。





「琴音くん、聞いてほしい」


「?」



「あたし、琴音くんのこと好きだよ」



「!?」






今、なんて…?


好きって、言ったか……?





「なんでっ……?」



「あたし琴音くんのこと、別に年下だなんて思ってない。

でも、まだ琴音くんのことよく知らないから、教えてくれる?」






彼女はそう言って、あの眩しい笑顔を俺に向けたんだ。





その笑顔に、俺の涙が溢れた。




「わっ、なんで泣くのー!?ちょっと待って……はい、レモン味!」





急に口に広がる、甘酸っぱい味。




「俺、本気で千花のこと好きなんだっ……」



「うん」



「だから俺も、もっと千花のこと知りたい……」



「うん」





初めての本気の恋は、上手くいかなくて、どうしたらいいのか分からなくて。



相手を想えば想うほど苦しくなって……。



だけど、彼女の笑顔ひとつで嬉しくなったり、知らなかった一面を見るとまいあがったりして。





俺たちの恋は、まだまだこれからだけど、俺は本気の恋というものを知ったんだ。





「千花……俺に本気の恋を教えてくれてありがとう」





優しく微笑む彼女。

その笑顔に、自然と頬が緩む。





この恋は、俺にとっての初恋。


誰かに初恋ってなに?って聞かれたら、俺は迷わず答えるだろう。




初恋は、ほろ苦いんだよ、って。








終わり。