「琴音くーん!」
「かっこいーっ!」
グラウンドにいる俺に、教室の窓から手を振ってくる女子。
そんな女子に軽く手を振って答える俺、東城 琴音(とうじょう ことね)。
「相変わらずだなー、お前は」
そんな俺に横からツッコミを入れたのは、真野 悠太(まの ゆうた)だ。
中3になったばかりの5月下旬。
部活をやっている奴らはそろそろ引退の時期で、最後の試合に向けてラストスパートをかけている。
「別にいいじゃん。俺、女嫌いじゃないし」
女は嫌いじゃない。
付き合った女も少なくないし、それなりにちゃんと好きだった。
でも、どこか本気になれない。
だから、相手が束縛まがいなことを言うと、冷めてしまう。
「手当たり次第じゃなくて、一回真面目に探したら?運命の人ってやつ」
「お前は大好きで大好きで仕方ない彼女がいるもんなー」
「なっ……!」
真っ赤になりやがって。
分かりやすいやつ。