ある日、プールの授業で飛び込みの練習をしていた時の事。
中学3年生の皐月(さつき)は準備運動をするのがなんだか恥ずかして
足首をくねくね、 手首をフリフリ 可愛いしぐさだけをチョイスして、
適当にやっていた。

(左足がなんだかツリそうだなぁ・・・)
そう思いながらも、もう飛び込み台に一列に並んだ皐月は
前から3番目という微妙な位置にいた。

(華麗な飛び込みをしなきゃ・・・)

ピーッ

先生の吹く笛の音に合わせて、三回目でジャンプ

ピッ ・・・ピッ・・・・ピーッ

皐月の前の生徒も 綺麗に飛び込んで行った。
次は皐月の番、

ピッ・・・・ピッ・・・

二番目の笛の音に合わせて、両手先を足首へ下ろす。

すると・・どうしたことか、足首で目の前が暗くなったというんだろうか、

まるで皐月の目は、夜のプール台にいるかのような暗さを感じていた。

(アレ?)

ピー!

体が条件反射で 真っ暗な水の中にダイブしていた。


バッシャーーーン!!
見事な腹打ちの音がする。

後ろの方で、友人達のクスクスと笑う声が聞えている。

(と・・・とにかく泳がなきゃ・・・ でも・・・)


水中に入っても皐月の視界は夜の海のように真っ暗なままで、
ゴーグルをしていても意味が無い。
不思議と 息苦しさも普段の倍早く押し寄せてくる・・・。

クロール・・・クロール・・・ 次息継ぎ!

しようと顔を上げた瞬間


水の上に顔が出ているはずなのに・・・息が出来ない。


!!


クッ


どうして?


諦めと共に意識が遠のくのはそれから数秒後の事だった。