失いたくないから愛せない


「加奈子ちゃん?」

急に立ち止まった私に、小林くんがハッとした表情をした。


「ごめん、ちょっと言いすぎたかな?あんなやつでも加奈子ちゃんの好きな人だもんね。ただ、ちょっと嫉妬しただけだから…」

小林くんが優しい表情に戻る。



だけど、やっぱり目が笑っていない気がした。



「…ってない…」


「え?」


「あたし、廣祐が好きなんて言ってないよ?」


「え?」


「ごめんな…さい。やっぱり今日は一人で帰るね」


私は、小林くんを置いて走り去った。


何度か呼び止められていたけど、振り返ることなく走った。





好き。



廣祐が好き。






その想いを胸に全力で走った…。