失いたくないから愛せない


校門のところで、廣祐に追いついた。



名前を呼ぶと、廣祐はびっくりしていた。




「一緒に帰ろ」


私の言葉に廣祐は一瞬固まっていたが、小さく頷いた。




しばらく無言だった。




何を話したら…



昔みたいに普通に…


普通に…。



「「あのさ」」


廣祐と声が重なった。



廣祐がフっと笑った。


私も笑う。



「なんだよ。何笑ってんだよ」

「廣祐もじゃん!」


「お前が笑うからだろう」


「違うって、廣祐が笑うからだってば!」


笑い合う二人。





懐かしさが蘇る。



昔のようだった。




廣祐の笑顔が私に向けられている…。




「好き」







自然とその言葉が出てきた。



「え?」




廣祐が突然、固まった。




私が急に真面目な顔になったから、驚いている。




「私、廣祐が好き」










はっきり、ゆっくり発したこの言葉。



ようやく言えた言葉。




だけど私は、ハッとして、いきなり廣祐を置いて走り出したーー