失いたくないから愛せない


その日の夕方、外は雨だった。


朝は降っていなくて、カサを忘れた。


下駄箱で茫然としていると、何人かの女子に声を掛けられた。

「安藤くん、相合傘しちゃう?」


そんな黄色い声は、俺の耳には届かない。


加奈子と小林の姿しか浮かばない。


「…すけ!」


そう言われ肩を誰かに叩かれた。

ハッとした。

呼び捨てされるのは、もしかしてー?


振り返ると、


「何よ。ボーッとしちゃって。カサ忘れたの?」

恵だった。