「……ごめん、エル」


ふわり。と、鼻を掠めたのは透明な風だった。

気が付けば、何も見えない。
その代わりに与えられたのは、優しさだった。
温もりだった。

それを、私は見ない振りをするのだ。
最も。無意識なのだけれど。


それが、一体何に対しての謝罪なのか。
どうして私を抱き寄せたのか。

行動と言葉が合っていない。
だから、戸惑う。


「………よく、分からない…」


そう言っても、シエルはなかなか離してくれない。
むしろ、逆に腕に力が篭ったような気さえしたのだ。

そんな彼が言った言葉に、どれ程私が衝撃を受けたか。

きっと。シエルには想像もつかないだろう。





「エル。君は、やっぱり暖かいんだね」


だって。
彼はそう言ったのだ。