もう、ダメだと思った。

そんな時。

「見つけた。やっと」

彼は私の前に現れる。


突然、ふわっと体が軽くなって。

最初は、聖騎士に捕まってしまったのかと思った。

だけど、違った。

肌に触れるのは、聖騎士が身に付ける鎧の金属ではない。
上品な布の感触だった。

驚いて目を見開くと、私は知らない青年の腕の中にいた。

歳は、同じくらいだろうか。

まだ若い、彼は誰なのだろうか。


そんな私と同じように、聖騎士達もまた彼を知らないようだった。


「貴様…一体誰だ!?」

さっきよりも、聖騎士達の声が遠くに聞こえる。

気のせいだろうか?

だって、普通なら馬の足に勝てるはずがないのだもの。

それなのに、彼は聖騎士達との間をぐんぐんと広げていく。


「悪いけど。この娘、貰ってくから」