大切な記憶を

視衣の家には小さいころよく遊びに行っていたので、視衣のお母さんとは顔見知り。

いつも笑顔だった視衣のお母さんしか、私は見たことがなかったから今のような苦しそうな、悲しそうな顔を見たのは初めてだった。

「視衣は…まだ治療中なの…。傷が、深いって…。」

視衣のお母さんは苦しそうに言う。

「…。」

私は思わず下を向いて拳を握ってしまう。

と、不意に私の腰に誰かが抱き着いてきた。

顔をあげたその子の顔を見たら、抱き着いてきた子が二女の城衣ちゃんだってわかる。

この子も、遊びに行くたび笑顔で「いらっしゃい、衣亜ちゃん!」と出迎えてくれたので、涙でグシャグシャの顔を見て、胸がちくりと痛む。