大切な記憶を

それを見届けた私は緊張が解けたように、ふうと息を吐き出す。

と、

「視衣~!憐といけちゃってんじゃないの~?」

「うるさいよ、衣亜。」

「ほんと、憐の言う通り。冷たい奴。」

「殴るよ、衣亜?!」

私は背後から近づいてきた衣亜の方にくるりと体を回転し、右手をグーにして殴るふりをした。

「あーごめんごめんってば視衣~…。」

「反省しなさい。」

「はい。」

衣亜はしょげたようにうつむいて小さく返事をした。