大切な記憶を

「…些細なこと、ですか。」







私は少し考えるように下を向いて、ふと思い当たったことを言ってみることにした。







「最近…私の友達に彼氏が出来たんです。ほんとに大好きな友達で…。でも、その子が彼氏の話をする時、一緒にいるのを見る時…心が苦しくなるんです。ギュッて掴まれるような、息が苦しくなるような…。体のどこかが悪いとかじゃなくて、心が自然にしてることだとは思うんですが。」








そう言うと、先生はそれをカルテにメモしてまた私をみた。







「もしかしたら、視衣ちゃんは、その友達の彼氏くんのことで思い当たることがあるのかもね。記憶を失う前に関わったことがあるとか、何かを一緒にやってたとか。胸が苦しくなるのはそういった体験が体に染み付いてるからじゃないかな。頭が覚えてなくても、心が覚えてる。体が覚えてる。そんな感じで。」