大切な記憶を

「心臓病だよ。」





聞いてはいけなかったと、思った。




私は、どうしたらいいのか分からなくて、ただ呆然と男の子を見上げた。



お互い会話もなく、どれだけの時間が経ったのか。




きっとほんの数十分だったのかもしれない。



でも私にとっては、何時間にも感じられた。





私たちの間の時間が動き出したのは、背後からしたら看護師さんの声だった。





「千翔世君!そろそろ病室に戻ってー!」



千翔世君と呼ばれた男の子は声の主を見つけて、



「今行きます!」


と声を上げると、私を見た。





「じゃあ、そろそろ行かなくちゃ。」





「あ、うん…。」




千翔世君は、私の車椅子のストッパーを外してから立ち去ろうとした。