大切な記憶を

木の根元に着くと、大きな日陰と涼しい風が気持ちよかった。




男の子は私の車椅子のストッパーをかけて、私の隣に来ると、同じように木を見上げた。




「この木、綺麗ですよね。僕も好きなんです。」




「はい。ほんとに、綺麗…。」



私はそう言って、ふとお礼を言い忘れたのを思い出して、男の子の端正な横顔を見つめながら言った。




「あの、車椅子、押してくれてありがとうございました。」



すると男の子は私の方を見てまたふんわりと笑った。




「どういたしまして。」



男の子は言って、私に少し近づくと、同じ目線になるようにしゃがみ込んだ。