大切な記憶を

「…ただいま。」

家のドアを開けて玄関に入る。

靴を脱いでいると、リビングからお母さんが顔を出した。

「あら、お帰り。視衣ちゃん、大丈夫だった?」

お母さんが優しく笑顔を向ける。

その笑顔は、今の私にとって、猛毒の針のようだった。

本当のことなんか、言えやしない。