この足取りだと、酔っぱらっているのかも知れない。

美桜はカウンターにもたれかかっている男のところへ行くと、
「あの、せっかくきたところ申し訳ありませんが…当店は一見さんはお断りなんです。

お客さん、どう見ても一見さんですよね?」
と、男に話しかけた。

「――はいっ?」

男は手に耳を当てると、聞き返してきた。

「当店は一見さんお断りなんです」

そう言った美桜に男はドアの方をチラリと見て、
「ここ…お店なんですか?

看板がなかったんですけど」

美桜の顔を見た。

「当店は看板を出さない、一見さんはお断りのシステムなんです。

ですから、今すぐお引き取りを…」

言いかけた美桜をさえぎるように、男は人差し指を美桜の前に出した。