さくらへようこそ

「あら、そうだったの。

じゃあ、私はもうここで」

「じゃあねー」

その場から立ち去った麻子に向かって美桜は手を振った。

「元気な人ですね」

麻子の後ろ姿を見送った大倉が言った。

「そうですね」

美桜はフフッと笑った。


「こんにちはー」

『星野酒店』のガラス戸を開けると、
「いらっしゃい」

パイプ椅子に座って文庫本を読んでいた星野が顔をあげた。

「あ、そちらの方は…」

レジテーブルに文庫本を置いた星野が大倉の存在に気づいた。