さくらへようこそ

「さくらちゃん、もうそろそろ許してあげたらどう?

あの後、上野くんは椅子を自腹で弁償してくれたし、安部くんだってマドレーヌ持って謝ってきてくれたじゃない」

不動産屋が美桜をなだめるように言った。

ちなみに話に出てきた“上野くん”とは、安部の専門学校時代の同級生の名前だ。

彼と一緒に雑貨屋を経営しているのである。

「まだまだ許しませんよ。

そうですね、後80年と言うところですかね?」

そう言った美桜に、
「許してもらえるのが80年後と言ったら、俺死んでますよ」

安部は困ったと言うように言った。

「だいたい、そもそもの発端は不動産屋さんが2人を連れてくるから…」

カランカラン

思い出したと言うように話し始めた美桜をさえぎるように、ベルが来客を告げた。