さくらへようこそ

「おー、気が利くねー」

工場長は嬉しそうに言った。

「今日は特に寒かったですからねえ」

校長先生はおちょこに熱燗を注いだ。

「そう言えば、安部くんはどうしてさくらちゃんのところでバイトを始めたの?」

レコード店が思い出したと言うように、安部に聞いた。

その質問に、
「新しく雇った女の子が料理上手だから、なんですって」

答えたのは美桜だった。

「えっ、ちょっと…」

安部は慌てたように言った。

美桜はプイッと横を向いた。

美桜――と言うよりも『さくら』に、安部には前科があるのだ。