さくらへようこそ

「うーん、美味しい♪」

美味しそうに鰆の塩焼きを食べる常連客たちを見た後、
「さくらさん、これでどうですか？」

とっくりを持って声をかけてきたのは、安部文人（ｱﾍﾞﾌﾐﾋﾄ）である。

彼はこの町で専門学校時代の同級生の男と一緒に、小さな雑貨屋を経営している。

今月に入ってから安部は週３回だが、料理の勉強も兼ねて『さくら』でバイトを始めていた。

美桜は安部が温めたとっくりを手に持つと、
「うん、出してもいいわ」
と、言った。

安部は嬉しそうに笑うと、
「お待たせしましたー。

今日は熱燗だそうです」

常連客たちの前にとっくりを置いた。