さくらへようこそ

男が頭の中に浮かんでいるのは、いかがわしいものなのだろうか?

「正確に言うなら、小料理屋と言うところですかね。

店の名前は『さくら』です」

続けて言った美桜に、男はやれやれと言うように息を吐いた。

「わかりました。

『ニコニコ横町』の『さくら』、ですね。

失礼ですが、お名前の方をおうかがいしてもよろしいでしょうか?」

男が名前を聞いてきた。

「横山美桜です」

美桜は自分の名前を言った。

「横山さん、ですね。

僕は大倉璃水(オオクラリスイ)と申します」

男――大倉が丁寧に自分の名前を言った。