さくらへようこそ

すっかり暗くなった空の下。

大急ぎで『ニコニコ横町』の看板をくぐった不動産屋が向かった先は、バー『さくら』だった。

勢いよくドアを開けると、ベルがそれにあわせるように勢いよく鳴った。

「おい、聞いたぞ！

何が大変で何が非常事態で…！」

息を切らしながら叫ぶように質問した不動産屋に対し、カウンター席ですでに飲んでいるいつものメンバーはカウンターの中を指差した。

不動産屋が彼らが指差した方向に視線を向けると、手際よく料理をしている男の姿とその隣で氷を丸く削っている美桜の２人の姿があった。

「ギョッ！」

不動産屋は両手を顔に当てた。

「これが大変で非常事態」

工場長が不動産屋の質問に答えた。