さくらへようこそ

「どうも」

現れたのは、昨日泥酔した状態でやってきたあの男だった。

「えっ、あの…」

突然の来店に、美桜は戸惑った。

男はカウンターにショルダーバックを置くと、
「昨日、ビール1杯をごちそうになったのでそのお代を払いに」

そこから財布を出した。

「お代って…ビール1杯だけじゃないですか」

「でもお金はかかっているんでしょ?

それに、俺の気が済みません」

そう言って財布に手をかけた男に、美桜は仕方ないと言うように息を吐くと、カウンターのカゴを彼の前に差し出した。

「…何ですか?」

カゴを指差して男が首を傾げた。