さくらへようこそ

達也は椅子から腰をあげた。

「今、何時ですか?」

そう聞いてきた達也に、
「9時を少し過ぎたところです」

時計に視線を向けた後、美桜は答えた。

「ああ、もうそんな時間か」

達也は呟くように言った後、前髪をかきあげた。

「これからどちらに行かれるのですか?」

そう聞いた美桜に、
「10時40分の高速バスで名古屋へ帰るんですよ」

達也が答えた。

「えっ、もう帰るんですか?」

美桜は驚いて聞き返した。

「ええ、日帰りの予定でしたからね」

達也は答えた。