さくらへようこそ

「何が書いてあるんですか?」

右腕の刺青を覗き込んだ美桜が言った。

近づいてよく見ると、紺色の複雑な模様だった。

「5年前、育ての母の49日が終わった時に入れたんです。

模様のように見えますけど、母の名前をローマ字にして崩したものなんです」

達也が言った。

「痛かったんじゃないですか?

肌に刃物を直接入れて描くそうですから」

そう言った美桜に、
「そうですね、しばらく右腕が使えなかったです。

まあ、左利きだったから生活には特に支障はありませんでしたけど」

達也は答えた。