さくらへようこそ

「お察しの通り、彼女に身内はいませんでした。

彼女の遺骨は近所にある寺で納骨をお願いしました」

達也は答えた。

「私の方からも質問をお願いしてもよろしいですか？」

それまで唇を閉じていた美桜が言った。

安部と達也は美桜に視線を向けた。

「どうして、あなたはわざわざ私に彼女が亡くなったことを伝えにきたのですか？」

美桜は質問をした。

彼女からして見たら母親は『さくら』の前のママである横山桜野、ただ１人だけなのだ。

桜野は捨てられていた美桜を拾い、自分の娘のように深い愛情を込めて育ててくれた人だ。

美桜が道を踏み外すことなく、まっすぐと生きて行くことができたのは、桜野のおかげなのだ。