「美音…か…。キレイな名前だね。」
奏多がそう言った。
その瞬間、私の頭の中では、大きな桜の木の下で、1人、ポツンと座っている女の子の姿が見えた。
そこに、1人の男の子が駆け寄る。
『ねえ、キミ、名前なんて言うの?』
『え…?』
『だから、名前!キミの名前は?』
『吉岡…美音…。』
『美音ちゃん?キレイな名前だね!!』
そう言って、男の子は、手を差し出した。
『友達になろ!僕はーー……』
ーーーー…………
「おんー…美音?」
「えっ?」
突然聞こえた声に、我に帰る。
目の前には、奏多。
「どうしたの?ボーッとして。」
「…なんでも…ありません…」
「ふぅん…。ま、美音が言いたくないなら、いいけどさ。それより、はい。」
そう言うと、奏多は、立ち上がり、私に手を差し出した。
「え?」
「いつまで座ってんの?」
その手は、私を立たせようとしてくれたもの。
恐る恐る、その手に自分の手を乗せた。
ギュッと手を掴まれ、引っ張られたかと思うと、私は立ち上がっていた。

