スケッチブックに筆を走らせている蓮の顔を覗き込んでみる。
「描きたいのって?」
「内緒。」
内緒ってなによ。
でも、目を輝かせながらパレットを握るその姿を見ていたら、……まぁいっかって。
私も絵の具に手を伸ばした時だった。
ープルルルルー
静かな教室に鳴り響く、私のスマホの着信音。
ポケットから取り出してみると、画面に映し出されていたのは見たことのない番号だった。
とりあえず画面をタップした。
でも、これから起こる事態を誰が想像できただろう。
この時からだった。
私の中の全てのものが、大きな音を立てて崩れ落ちていった。