彼の名前は山城蓮。
私の大好きな人。
私達は同じ美術部で、毎日こうして2人で美術室へ向かう。
嬉しくて、ドキドキして、私の大好きな時間だ。
古びたドアを開けると、壁一面に貼られた大量の絵が目に飛び込んできた。
人の絵から、抽象的な意味の分からない絵までたくさんある。
その横を通り過ぎると、ロッカーから絵の具とスケッチブックを取り出し、いつもの机へ向かった。
縦横3つづつ、計9つの机のうち、真ん中の机が私達の特等席。
絵の具と水の入った容器を置き、スケッチブックを一枚めくった。今日は何を描こうか。
隣を見ると、蓮はもうパレットに色をのせていた。
……オレンジ色。
私この色が一番好きなんだよね……。
「ねえ。本当に上野の頭描くの?」
「そんなわけねぇだろ、ばーか。冗談だよ。それより俺、描きたのあるし。」
蓮はお腹を抱えて笑った。
なによ、ほんとに描くのかと思ったじゃん。


